空き家を解体して、駐車場経営を行う方が増えています。空き家管理の手間が無くなり、その代わりに駐車場使用料が収入として手元に入ってきます。
住宅やアパートを建てるわけではないので、固定資産税も安価になり維持管理の経費も軽減されます。駐車場管理の手間は不動産会社や民間業者に管理を委託してしまえば、働かずして一定の収益も得られることでしょう。
しかし、メリットばかりではありません。空き家を駐車場にしてしまうことにはどのようなメリットやデメリットがあるのかを詳しく解説します。
空き家を駐車場にした場合、どうしてもメリットとデメリットはあります。
やはり、どんな事業を行う場合でもメリットとデメリットはあるものなので、ある程度シミュレートしてから実行することをお勧めします。
空き家が収益物件に生まれ変わる場合もある
あなたの空き家を解体して更地にし、その後駐車場として活用すれば毎月安定した収入を受け取ることができます。この「安定した収入」を得られるのが一番のメリットです。
空き家を解体して駐車場にした場合、住宅が建っている土地よりも固定資産税が高くはなりますが、アパートやマンションを建てて経営するよりも固定資産税はかなり安価になります。
その点駐車場の場合は建設費用も安価ですし、建設後の維持費や修繕費もあまりかかりませんから、元手が無くてもすぐに経営に乗り出すことも可能です。
それでは、駐車場経営に際して実際に掛かる費用を算定してみましょう。30坪の敷地にあった2階建て・木造の空き家を解体して駐車場にした場合と仮定します。
解体費用 80万円~120万円
舗装費用 50万円(コンクリートの場合)~60万円(アスファルトの場合)
安く見積もって130万円、高く見積もっても180万円ですから、マンションやアパートを建設した時よりも間違いなく安価な費用で経営が可能です。
30坪の敷地すべてを駐車場にした場合、一部を通路として確保したとしても最低5台、多くて8台程度は駐車場として利用できますから、後は1台当たりの月極駐車料金を決めるに当たり、建設コストを考慮しつつ周辺の月極駐車場と同レベルに合わせて設定することになります。
空き家の管理の手間が軽減される
今まであれば、空き家の掃除や庭木の剪定、近隣から苦情が入ればその対応など、さまざまな管理上の手間がかかっていました。
空き家を更地にしてしまえばこれらの手間は全部無くなりますし、業者にお金を頼んで行ってもらって掃除や剪定の費用も浮くので財布にもやさしくなります。
あなた自身も空き家の管理にとられていた時間が自由な時間に生まれ変わるので、休みの日に自由に使える時間が増えるメリットが生まれます。
固定資産税が倍になる場合もある
駐車場にするのは物理的に容易ではありますが、更地を駐車場にすると固定資産税の軽減措置がなくなってしまうので注意が必要です。ある意味、これが駐車場経営を行った場合の最大のデメリットと言えます。
これは、家屋がある場合は「軽減措置」が適用されて固定資産税が減免されているものの、解体して無くなってしまえば軽減措置が適用されたくなり固定資産税が最大6倍になってしまうからです。
税金が6倍に増えてしまえば、駐車場経営で利益を出す場合に固定資産税の増加分を考慮しながら料金を決めなくてはなりませんから、採算が取れるかどうかに大きく影響を及ぼします。
あと、駐車場をアスファルトで舗装するかしないかで固定資産税は変わってきます。
駐車場経営にあたって初期費用をかけたくないため、とりあえず「砂利敷きの青空駐車場」にしてしまう人も多いですが、砂利敷きは税法上構造物とみなされないので「更地」として税金が課税されてしまい、固定資産税が高額になってしまいます。
一方、アスファルトやコンクリートで整地している場合は「構築物」があるとみなされて、小規模宅地等の特例により、駐車場の面積が200平方メートルまでの土地であれば、固定資産税が本来の額の50%に軽減してもらえるのです。
利益の税金は空き家経営よりも高い
税金面で気になるのは、駐車場経営で得られた利益にかかる税金です。
基本的に経営利益は利益を得るためにかかった経費を引いた残りの金額に対して課税されるものですが、空き家経営と駐車場経営では何が違うと言えば、この「経費」の部分です。
空き家経営の場合、必要経費としては光熱水費や住居の修繕費、固定資産税などの税金など、さまざまな経費がかかるものです。
駐車場経営の確定申告について
もし駐車場経営だけで年間20万円以上の収入があった場合、確定申告で申告しなければなりません。
所得税の申告方法は駐車場経営だけを専業にしている場合と、本業の傍ら副業でやっている場合で違ってきます。
仮に個人事業主として「青色申告」をすると控除額の追加などさまざま優遇が受けられます。例えば1つの事業規模で経営している駐車場の場合、不動産所得の年間の売上げから65万円の控除が受けられるなどの優遇があります。
青色申告を行う場合、作成する書類や帳簿が多くなり複雑になってしまいますが、会計ソフトを使用すれば容易に作成できるので、ちょっとした事務量の増加だけで65万円の控除があるのですからぜひチャレンジしてください。
なお、駐車場経営の場合、固定資産税や土地の賃貸地代などを1年間の駐車場収入から差し引いて20万円以下になる場合は確定申告をする必要はありません。
駐車場の経営を始めるまでにかかる費用として、空き家の解体から始めるとします。
土地の整備費 | 残置物の撤去費・整地費・舗装費・ライン引き費用など |
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看板の設置費 | 料金案内・誘導看板・料金精算機など |
設備投資 | 街灯・監視カメラ・フェンスなど |
空き家を解体して、整地するところから経費とすることができます。アスファルトや砂利を敷き詰めるような舗装にするかで、土地の整備費用はかわります。
コインパーキングや月極駐車場などの運営方法にもよりますが、看板などを置く場合は管理会社ではなく、自己負担で設置することで、「宣伝広告費」として経費計上できます。
また、駐車場を運営する場所によっては、料金精算機や監視カメラなどが必要になります。これらは、土地活用のプロに相談して、方針を決める方がよいでしょう。
駐車場運営でかかる必要経費
不動産所得か事業所得か?
駐車場経営はこの3つの所得として確定申告できます。
事業所得の場合、経費計上できる費用の幅が広いので節税効果が高いといえます。しかし、管理人が常在していたり、駐車場内の事故や車盗難の責任を負うコインパーキングのような形の場合のみ認められます。
月極駐車場のような、利用者に車を止めるスペースを貸し出しているという、責任がない場合は不動産所得になります。
また、サラリーマンの副業で駐車場経営をするという場合は、雑所得として判断されることも多いので税金なども変わってきてしまいます。
具体的な節税効果や、税負担は空き家を管理している方の状況によって違います。ぜひ専門家へ相談することをおすすめします。
空き家を駐車場にした場合、そこから確実に収益を得るためには駐車料金をじっくりと考える必要があります。
まず、更地に何台の車が駐車できるのかを考える時には「車1台駐車するための必要な広さは20平方メートル」と覚えておきましょう。
この面積は不動産業界でも基本地として用いられているもので、単に車の大きさだけでなく、バックや切り替えをする場合に必要な面積も含まれています。
更地の敷地が100平方メートルの場合
100÷20平方メートル=5台駐車できる
ただし土地の形状によってはこの方程式が当てはまらない場合もあるので、実際には土地の寸法を測量して確認する必要があります。
あと、周辺の駐車場相場も十分考慮に入れましょう。相場より高ければどんなに駅などに近くても利用者が集まりませんし、安すぎてもあなたの利益が得られないだけなので、しっかりと検討してください。
駐車場の相場を確実に理解するのは不動産会社に聞くのが一番です。一般の利用客を装って電話で尋ねてみるのもよし、駐車場に掲示されている看板などの情報を確認するのも相場の把握につながります。
なお、確実に利益を出したい場合は月極駐車場の専業にした方がいいでしょう。駅や公共施設に近いところの場合は時間貸駐車場を経営してもいいでしょうが、曜日やイベントの有無で利用者に波が出てくるので利益にも波が出てしまいます。
空き家を駐車場にしたい場合、相談相手としては不動産会社と駐車場経営会社の2つがあります。
不動産会社は街中にある個人営業の会社でもいいですし、全国的に名前を知られている会社でもいずれでもいいですが、後者の方がノウハウをたくさん知っているのでこちらのニーズを踏まえた事業を検討してくれるでしょう。
一方、駐車場経営会社はコインパーキングや月極駐車場などを経営している専業の会社で、全国規模の会社もあれば地方都市で営業している会社も多いです。
もし、あなたの空き家が駅や公共施設に近くて一定の利用者が見込める場合は、駐車場経営会社の方から「ぜひうちにやらせてください」と提案してくる場合もあります。
その場合、空き家の解体費用や更地の整備費用に至るまですべてを会社側で負担してくれる場合もあります。
つまり、あなたは一銭も支払うことなく駐車場経営を始めることが出来るのですが、もちろん経営開始後は会社側に手数料を支払う必要があるので、全部自分で始めた時よりも利益は少なくなってしまいます。
でも、手もとの資産が少なくても駐車場経営に乗り出すことが出来るのは大きなメリットと言えるでしょう。
空き家を駐車場にする場合、守らなくてはならない法律があるのでしょうか。
駐車場に関連する法律でまず該当するのは「駐車場法」です。
駐車場法は、不特定多数の自動車が駐車することのできる駐車場で500平方メートル以上の面積がある場合に適用される法律です。また、経営しようとする駐車場が都市計画区域内にある場合に適用されます。
一般的な空き家の場合、そもそも500平方メートル以上の面積を確保できる広さの空き家はありませんから、それをそのまま解体して駐車場にしても駐車場法の対象ではないので届け出や許認可を得る必要はありません。
また、不特定多数のために使用させない月極駐車場や職員用の駐車場の場合は駐車場法の対象になりません。
あと、駐車場は土地の利用を定めた「用途地域」の制限を受けないので、法律上どこに作っても問題となることはありません。
最近は「駐車場シェアサービス」の名称で、使わない空き家のガレージや週末に出かけている間に空いているガレージをシェアするサービスが誕生しています。
利用者はインターネットの専用サイトを通じてガレージを予約し、クレジットカードで前もって決済します。当日はメールで送られてきた予約表を印刷してダッシュボードに掲示しておくことで利用できる、と言う仕組みです。
駐車場シェアサービスは定期的な収入を保証するものではありませんので、いわゆる「お小遣い稼ぎ」の域を出ない方法ですが、既存の空き家を解体することなくそのまま維持しつつ、ガレージ部分だけを自分の都合のいい時に貸し出す(=シェアする)サービスです。
シェアサービスに空き家の駐車場を登録するには、運営会社に申し出て空き家の駐車場の情報を登録する必要があります。
料金の収納は運営会社がすべて行ってくれ、手数料を引いた金額をあなたに支払ってくれます。また、あなた自身が当日現場で集金をしたり駐車場の監視などをする必要は一切なく、ユーザーとのやり取りはすべて運営会社が行ってくれます。
特に、あなたの空き家が定期的なイベントの開かれる公共施設の近くや、もともと駐車場が不足している駅の周辺などにある場合は利用者が定期的に見込めます。
将来的に駐車場経営を考えている場合でも、まず駐車場シェアサービスを利用して利用者がいるかどうか確認してみることから始めてもよいでしょう。
駐車場シェアサービスの運営会社は以下のような企業がありますので、ホームページをご確認ください。
空きスペースを貸す【特P】
こういった希望をマッチングさせる駐車場シェアリングサービス「特P(とくぴー)」。0円でスタートできて、登録するだけなので手間もいりません。
車1台分・バイク1台分のスペースを1日4時間から貸出しすることができ、もし万が一の事があっても、24時間コールセンターが対応してくれるので安心です。
駐車場の料金はクレジット決済なので、駐車場を借りた方とのやり取りも必要ありません。
空き家を将来的にどうするか、明確に決められる場合もあればそうでない場合もあるでしょう。
でも、せっかく不動産を所有しているのですから、管理している間にある程度収益を得られるなら活用したいと思う人も多いはずです。
そう言う意味で、駐車場は将来的な空き家の用途が決まっていない場合でも暫定的に活用するための方法としてお勧めです。
例えば、空き家を解体してやがては自分の子供たちが家を建てるまで更地にしておくようなことを考えていれば、更地の間は駐車場経営をして利益を得るのも良い方法でしょう。
ただし、相続税の対象物件となる空き家を取り壊して駐車場とする場合には前もって税法の確認をするべきです。
相続税の対象物件となる空き家は、駐車場のように利益を得られる事業の用途で使ってしまうと、売却時に得られる3,000万円の特別控除枠が使えなくなり、相続税が挙がってしまうこともあるからです。
駐車場として暫定活用するにあたっては、その後の活用方法はこの機会に決めておくことや、場合によっては税理士や司法書士など専門家のアドバイスを受けながら事業を進めることをお勧めします。
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