2018年9月4日に大阪府を中心とする関西地方へ上陸した台風21号では、民家やマンションの屋根、ベランダやバルコニーなどの構造物が強風で飛ばされ、飛散した先の民家などを破壊するなど考えもよらなかった被害が出ました。
398件「みんながカメラマン」で投稿された最強台風(18/09/05)
実際、目の前で自動車が横倒しになるほどの強風を目の前にして、住民は室内でじっと耐えるしかなかった状況では、自らの家から飛散する屋根などを取り除くことも不可能だったのです。
特に最近は巨大台風の接近や、進行方向が予想外の方向に向かう「迷走台風」の発生が相次いでいて、台風で思わぬ被害を受けてしまう可能性も高まっています。
もし、自分が管理する空き家の屋根などが飛散して他人の財産を傷つけることになったと考えると、非常に恐ろしいものです。
ここでは、空き家の管理上、台風対策としてどのような事に気を付けておくべきかを調べましたので解説します。
台風の影響で空き家に何らかの被害が出ると、様々な不具合が起きる可能性があります。
具体的には次に掲げる不具合が生じる可能性があります。
一番考えられるのが、空き家の瓦やスレートなどの構造物が強風で吹き飛び、飛ばされた先にある隣家の住宅や自動車など「財産」を破壊するケースです。
特に台風の場合、30メートル以上の強風が襲ってくることもしばしばで、人が飛ばされたり置いてある自動車が横倒しになるほどの被害を及ぼす場合もありますから、屋根などの構造物もあっという間に飛ばされてしまう可能性があります。
もしこのような事態が起こり、第三者の財産を壊してしまった場合は、当然損害賠償請求を求められる場合もあるでしょう。
飛散した先に人間がいたら、当然負傷などの何らかの被害を与えることになります。
台風の最中に外を歩いている人はいないかもしれませんが、実際に2018年9月4日に関西圏へ上陸した台風21号では、飛散物でマンションのガラスが割れその破片で室内にいた人がけがを負った事例がたくさんあります。
台風が通過した後でも気は抜けません。一部が破壊されていることに気づかず、後日になっていきなり屋根の一部やガレージなどが倒壊する場合もあるので、台風直後に気になる部分は必ず点検が必要です。
屋根などの構造物が破壊されると、その部分の修繕を行わなければ空き家が劣化して倒壊する危険性が高まります。
例えば、屋根が飛んでしまった場合は雨漏りが生じることになり、家全体が湿気を帯びた状態になって耐久性が失われ、その後地震や強風によって空き家全体が倒壊する危険性が高まります。
また、湿気を帯びた空き家にはシロアリが繁殖しやすくなり、構造体の一部である木材を食べてしまうことで空き家全体の倒壊リスクが高まってしまいます。
もちろん、空き家の劣化が進んでしまうと台風の強風で空き家全体が倒壊する危険性も高くなるので放置しておくのは極めて危険です。
瓦などが飛散してもそのまま放置されているありさまを見れば、「ここは空き家かもしれない」と考える人も出てきます。
特に空き巣などの犯罪を狙っている人は、空き家であるかどうかを確認しながら次の押し入り先を物色しているので、破損していても放置されたままの家を見れば空き家であることを理解して、盗みに押し入る可能性が高まります。
また、庭先の樹木などが強風で傷んだ状態になっていても放置されているなど、人がいれば手入れがされるべき部分が放置されていると同様に「空き家」と判断されるきっかけになってしまいます。
では、実際に空き家が原因となって隣家や第三者が所有する財産に損害を与えてしまった場合、どうなるのでしょうか。
基本的には自分が管理している建物やその部品が要因となって損害を与えてしまったので、賠償を求められるとそれに応じなければなりません。
ただし、日ごろから空き家の管理を適切に行っていたかどうか、あるいは台風など損害を与える要因となった災害の規模によっては、加入していた火災保険などの適用が可能な場合があります。
具体的には、次のことを確認してから先方と協議するのが良いでしょう。
そもそも、空き家からの飛散物が原因で起きた破損について、その賠償責任を誰が負うべきなのでしょうか。
法律上、その財産を持っている所有者が賠償責任を負うことになり、所有者が亡くなっていたりする場合はその管理者が代わりに責任を負うことになっています。
実際、平成26年11月に施行された「空き家対策特別措置法」では、空き家の管理を持ち主あるいは管理者が負うことが明記されています。
つまり、法律を盾にとって「管理不十分」であったことを責められる形で賠償責任を求められる場合が十分にあるわけです。
なお、賠償責任については「空き家放置トラブルで損害賠償請求されないために知っておくべきこと」もあわせてご参照ください。
まず、空き家が火災保険に入っていて、その契約内容の中に「個人賠償責任特約」など風水害の被害に対応できる特約を付けていれば、それを使って相手に賠償することが可能です。
個人賠償責任特約は、加入者が法律上賠償責任を負った場合に使うことができるもので、火災保険に加入する際にオプションで付けることができます。あくまで特約なので、個人賠償責任部分にだけ保険加入することはできません。
空き家なので、以前は加入していた火災保険を解約しているケースもあり得ますので、まず火災保険の契約がどうなっているかを確認しましょう。
ただし、その空き家が適切に管理されていたかどうかで保険の対象にならない場合もあります。
保険会社は「適切に空き家を管理されていた」ことを踏まえ、予測しえなかった損害に対して保険の適用を検討します。管理不十分であった場合には自己責任として保険を適用しない場合もあるので注意が必要です。
また、火災保険に加入しなくても施設賠償責任保険など、空き家が原因となって生じた被害に対する賠償責任を担ってくれる保険に加入することも対策の1つです。
施設賠償責任保険については「空き家に損害賠償保険は掛けるべき。第三者に与える可能性のある損害とは」に詳しく掲載しています。
『火災保険の教科書』は、面倒な申請から見積もりまでサポートしてくれます。6,000件以上の保険を受領した実績があり、精度の高い査定がとても評判です。
日本全国対応可能。現地調査・見積もりは無料。
屋根・外壁・雨戸やエアコンなど損傷があるような場合は『火災保険の教科書』へ相談することをおすすめします。
空き家対策特別措置法では、損壊したままになっている空き家は速やかに持ち主あるいは管理者が対応することが義務付けられています。
特に周辺の生活環境に悪影響を及ぼす状態の空き家に対しては「是正勧告」など自治体から法的効力のある指導が入り、指導に従わない場合は過料(=罰金)を科せられるようになっています。
自治体からの指導を放置している状態で隣家などに損壊を与えてしまった場合、火災保険に加入していても「違法状態」であったことを理由に保険の適用とはなりませんし、裁判に発展しても違法行為を放置していた側にすべての責任がかかります。
ですので、損壊したまま空き家を放置しておくのは何かあった時には大変危険ですから、応急処置をするか解体するかのいずれかを検討するべきでしょう。
なお、空き家の解体には自治体から補助金が出る場合もあるので、詳しくは「空き家解体の補助金制度と対象となる条件は?」をご参照ください。
空き家を管理している立場としては、台風が襲来する時に特に気を付けておかねばならないことが分かれば、事前に対処すべきです。
特に以下の部分については十分な対策が欠かせません。
枯葉などで雨どいが詰まっているとそこから雨水があふれ出す危険性があります。
瓦やスレートなどが強風で飛散して隣家などを破損する危険性があります。
車庫(ガレージ)などが強風で破損、倒壊して部品が飛散する危険性があります。
庭にある樹木や植木鉢などが強風で破損、倒壊して部品が飛散する危険性があります。
屋根に設置しているアンテナ、洗濯竿、ベランダなどが強風で破損、倒壊して部品が飛散する危険性があります。
一時的に庭や軒先に置いてあるゴミや自転車などは強風で飛散する危険性があります。
これらの対策は、数時間でできるものもあれば素人ではできないこともたくさんあるので、まずは空き家の現状を確認したうえで、必要な対策をとるところから始めるとよいでしょう。
それでは、前の章で紹介した部分ごとに具体的な対策とかかる費用について解説します。
行おうとする対策によっては、素人ではできないこともあるので業者に依頼せざるを得ない作業もあります。また、台風が接近する直前に依頼しても業者が手一杯で対応してくれない場合もあります。
雨どいや側溝は枯葉や土砂などが堆積して詰まってしまうので、それらを取り除いてやれば問題は解決します。
雨どいは2階の屋根など高い場所にあるので、脚立を利用して作業をするか、屋根に乗って作業をするかのいずれかになりますが、高所であるゆえに危険な作業を伴いますので十分注意してください。
あと、ケルヒャー社などが販売している高圧洗浄機を使えば、遠い場所から水圧で汚れを飛ばすことができるのでお勧めです。高圧洗浄機はホームセンターなどで20,000円程度の価格で販売されています。
最も安く依頼できるのは時間当たりの費用で済む便利屋です。作業にもよりますが1時間1人2,000円~3,000円程度で依頼できます。
便利屋のいいところは、一度頼めば継続して依頼ができることや、個人営業の便利屋の場合フットワークが軽いので即日対応してくれる業者もあるという事です。
その他依頼する業者としてはハウスクリーニングの業者がありますが、中には屋内専門の業者もいるので、まず雨どいなどの清掃を対応しているか確認してから依頼しましょう。金額の目安を知るために見積をしてもらうのもよいでしょう。
自分でできることと言えば、屋根に上ってスレートや瓦を目視で確認して破損している場所を見つけるだけです。
DIYの心得がある人であれば、瓦を1枚交換するとか、スレートを1枚分貼りかえることも可能でしょうが、素人が施工してしまうと保証がないので不具合が出たらまた自分で修理をしなくてはなりません。
比較的建築年度の浅い住宅であれば、ハウスメーカーの保証が受けられる場合もありますが自分で施行してしまうと保証が無くなってしまうこともありますから特に注意が必要です。
ある程度の応急処置をする場合は、防水テープを破損している部分に貼るとよいでしょう、防水テープはホームセンターであれば1個300円程度で購入できます。
関連記事:空き家の屋根・屋根瓦のトラブルに注意!隣人に迷惑をかけないためにやるべきこと
業者に依頼すると屋根の悪い部分と防水シートなど附属する設備を交換・修理する事になります。
例えば屋根の場合は、3LDK(35坪)2階建ての空き家の場合、スレート瓦をすべて貼りかえると50万程度、その下地(防水シート)もすべて貼りかえるとさらにプラス50万、合計100万円程度は必要になります。
場合によっては足場を組んで施工することになるので、足場のレンタル料金がさらにプラスされると合計で130万円程度の費用が掛かるでしょう。
ただし、台風の直前にこれらの作業を依頼しても当然対応してもらえるわけがありません。日ごろから屋根に何らかの異常があった場合には速やかに業者に依頼しておくべきです。
ガレージで特に気を付けたい部分はスレートなどで構成されている屋根材の部分です。
屋根材を目視で確認し、ひび割れやめくれなどを確認し、発見したら防水テープで補強したり新しい屋根材に葺き替えます。
屋根材は形状や材質にもよりますが、一般的なガレージの補修材(ポリカーボネート・幅68cm・長さ2.65m)であれば1枚15,000円から販売されています。
もし、交換する技術を持ち合わせていない場合は業者に依頼するしかないでしょう。
ガレージ専門の業者というものはありませんが、エクステリアを扱う業者やリフォームを扱う業者、ホームセンターなどのリフォーム担当部門であればカーポートの屋根交換などに応じてくれます。
仮に1本足・ポリカーボネート製のガレージ・車1台分の面積のガレージとした場合、屋根をすべて替えた場合の価格は約40万から45万程度の費用が掛かります。
部分だけの交換というのも応じてくれますが、まず現場の状況を見てもらって見積もりを出してもらって金額の目安を付けます。
業者に依頼する場合、台風襲来であわてて申し出ても応じてくれる可能性は極めて低いので、台風シーズンの前に計画的に修繕することをお勧めします。
ガレージの相場については以下のサイトも参考になります。
カーポートの設置・交換する費用&費用を抑える業者の選び方(リフォームガイド)
https://www.reform-guide.jp/topics/carport-hiyou/
庭木や植木鉢は台風の突風で飛ばされないように対処することが必要です。
植木鉢は空き家の中など風の影響が及ばない場所に一時的に退避します。もし1人で持ち上げられないような大きな植木鉢であれば、便利屋などに依頼して移動のサポートをしてもらうしかないでしょう。
庭木で気にしたいのは強風で折れてしまうような枝です。危険な枝があれば自分で切り落としておくのがよいでしょう。
ノコギリで切れないような太い枝はチェーンソーを使う方法もありますが、素人が使うとケガのもとになりますから無理に使うことはお勧めできません。
あと、切り落とした枝が大量になる場合は自分で清掃センターなどに持ち込む必要もあるなど、余計な仕事も増えてくるのでその場合は業者に依頼した方が手間はかからないでしょう。
業者に依頼する場合は植木屋や園芸業者に依頼することになります。
剪定の相場は「面積」「人数」「量」と言われており、庭の面積や依頼する人数、そして伐採した後に生じる枝の量によって金額は変わってくるようです。
人数で換算すると、1日20,000円程度が相場と言われていますが、特に剪定の依頼が多い4月~6月には高めの相場で費用を請求される場合も多いようです。
業者に依頼する場合も、直前で対応してくれることは難しいので前もって台風シーズンの前に計画を立てて剪定を依頼する必要があります。
ここで言う「放置物」とは、追加で付け加えたベランダやバルコニー、エアコンの室外機、物干し台やアンテナのことを指します。
これらの設置物は存在するのが当たり前になってしまっていることもあり、台風が来た時にあえて確認することを忘れてしまいがちなものばかりです。
まず、これらの設置物が強風で飛ばされる危険がないかを確認しましょう。目視だけではなく、実際に主要な支柱や取り付け部分を確認してネジのゆるみや支柱の腐食がないかを必ず確認してください。
もし、空き家の管理上不必要な設置物があればこれを機に撤去してしまうのも対策の1つです。
あと、ベランダやバルコニーの補修やアンテナの補修は自分で行うにはなかなか難しいですし、高所で作業を必要とするので転落する危険もあるので専門業者に依頼することをお勧めします。
関連記事:空き家のベランダの注意点は?倒壊する危険性・ハトなどの被害も
ベランダやバルコニーの場合は、エクステリアを扱う業者やリフォームを扱う業者、ホームセンターなどのリフォーム担当部門であれば修繕等に対応してくれます。
また、アンテナの場合は付き合いのある電気店に相談すると対応してくれるでしょう。
ベランダやバルコニーを1階の屋根上に設置する「後付け」の場合、一般的な広さ(幅2m・奥行90cm)の場合、約20万円の費用が掛かります。
修理を依頼する場合、まず「すべてを交換した場合」の価格と比べて高いか安いかを考える必要があります。
支柱などの部品単位の交換も可能でしょうが、工賃等と合わせるとどのくらいの金額になるのかも見積もりを取って検討することをお勧めします。
あと、業者に依頼する場合も、直前で対応してくれることはほとんどあり得ないので、前もって台風シーズンが来る前に検討しておきましょう。
放置物とは、使わないまま放置されている自動車やバイク、生ごみボックスなどのことを言いますが、一時的に放置している家財道具などもさします。
これらの放置物の中で、強風で飛ばされてしまいそうなものはすぐに移動するか、処分することをお勧めします。
また、雨に濡れないようにとかけてあるブルーシートなどは強風で飛ばされることが多いので、台風の前には必ず撤去しておきましょう。
処分に当たっては自治体の清掃センターに問い合わせて回収してもらえるものかどうか確認しましょう。回収してもらえる場合でも、有料なのか無料なのか、持ち込みが必須なのかを確認します。
不要な放置物でも価値があるものがあれば、不用品回収業者に買い取ってもらうか、無料で引き取ってもらうことを考えましょう。
特に自動車やバイク、エアコンなどは価値があるので買い取り値がついて利益が出る場合もあります。
今まで紹介した部分に何らかの被害があった場合は、まずこれ以上被害が及ばないように予防することになります。台風が過ぎ去った後にしておいた方がおすすめなことをまとめました。
屋根が壊れていたり、荷物が散乱している場合は、隣家に「何かご迷惑はなかったでしょうか?」と尋ねましょう。何もなければいいのですが、何かあった場合は丁寧にお詫びし、後日改めて補償の話をする旨を伝えておくと安心感を与えられます。
もし、「施設賠償責任保険」「火災保険」などに加入している場合は、保険会社にも連絡を取って早めの対処を心がけましょう。実際に破損状況のわかる写真を撮影し保険会社に報告しておくと手続きがスムーズです。
自分の家も被害が出ている場合、空き家へ急に向かうのは難しいかもしれません。そんな時は知り合いの方に連絡をとって、空き家周辺の被害状況を把握するとよいでしょう。
破損した部分の上にブルーシートをかけてこれ以上の部品の飛散や雨漏りを予防することが必要です。壊れている個所によっては業者に依頼する必要もありますが、業者も同様のオーダーを受けてなかなか来てもらえない可能性もあります。まずは自分で空き家に赴き、状況を確認して必要な応急処置を行うことです。
めったに見ることはない屋根裏ですが、台風の後はぜひチェックしてください。気づかないうちに木材がぬれてしまい、腐食したり、漏電したりしてしまうことも考えられます。
懐中電灯を使い、家の中を隅々まで見ていきましょう。天井にうっすらとシミが出ていたり、床が膨れ上がったり、壁紙の上の方に黒いシミが出ているなど雨漏りを知らせるサインが出ている場合はどこかに雨漏りが発生しています。
雨漏りで湿気がこもった家はシロアリが発生したりカビが繁殖したり、二次災害も心配です。少しでもはやく被害を把握して対策をうつようにしましょう。
最近、日本に襲来する台風の強さはかなり大きくなっていて、その分被害も増している実情があります。
今までであれば何ともなかった空き家も、昨今の「スーパー台風」にはあっけなく破損してしまうことも。空き家を管理している私たちとしても早めの対処と予防が必要不可欠になってきているとも言えます。
今までの台風では想像できなかった被害が起きても仕方ないと考え、昨今報じられている台風の被害状況も踏まえた事前の対策をぜひ実践してください。
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