空き家の耐震診断が必要かどうかを判断するのは、将来的に空き家を利用するかしないか、資産として空き家を活用するかどうかが判断材料になります。
空き家の売却あるいは賃貸を検討している場合には耐震診断を行って安全性を担保して第三者に売却あるいは賃貸するべきです。
また、空き家のリフォームを行う際に自治体から補助金を得る場合には昭和56年度以降の耐震基準を満たしている必要があり、それを立証するために耐震診断を行う必要もあるでしょう。
そこで、空き家の耐震診断が必要な場合やかかる費用について詳しく調べてみました。
耐震診断が必要な場合は、一般的に空き家を資産として第三者に売却あるいは貸し付ける場合、その他将来的に自分やその子どもなどが再度居住する場合などが想定されます。
具体的には以下に掲げるケースであれば耐震診断が必要と考えてよいでしょう。
空き家を賃貸物件として第三者に貸し付ける場合、当然安全に暮らせる物件であればあるほど借り手も多くなります。
また、借り手を探すために不動産業者に仲介を依頼するケースも多いですが、不動産業者も借り手がつきにくい物件は元から仲介しませんから、仲介してもらうために「耐震基準を満たしています」などのプラス要素を得るために耐震診断を行うことも必要となります。
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今は空き家となっていても、将来的に自分や自分の子どもたちなどが居住する可能性がある場合、安全性を確保しておくことは極めて重要です。
令和の時代になって「東南海地震」「南海トラフ地震」などが発生する危険性が高まっている中、現行の耐震基準を満たしている空き家であれば安全に居住することができるでしょう。
南海トラフ地震が発生した場合の最大震度は震度7と仮定されており、昭和56年以前の旧耐震基準で建築された建物の大半が倒壊するとされています。
過去に起こった阪神・淡路大震災や東日本大震災の被害を見てみても、倒壊した家屋に閉じ込められて亡くなるケースや、倒壊した家屋が道路をふさぎ救助活動や消火活動が滞った事例もあるのです。
また、周辺の住宅は現行の耐震基準を満たしているにも拘らず、あなたの空き家が倒壊して周辺の住宅を破損してしまうリスクもあります。
これらのリスクを避けるためには、耐震診断を行い、その結果に基づき必要な改築・リフォームを行って耐震性を高めるか、空き家そのものを解体してしまう以外に方法はありません。
第三者に空き家を売却する場合を考えてみると「地震で倒壊するかもしれない空き家」にお金を払う人は少ないでしょう。その逆であれば購入してもらえる可能性もあるわけで、空き家を管理している人から見れば「資産」として空き家を活用できることになります。
耐震基準を満たしているかどうか、あるいは耐震基準を満たすための改築やリフォームを行っているかいないか、これらの違いで空き家は「資産」として活用できるのです。
では実際に耐震診断を行う場合、どれくらいの費用が掛かるのかはもちろんですが、そもそもどのような方法で行うかを前もって理解しておく必要があります。特に以下の項目については特に理解しておかれることをお勧めします。
耐震診断は、空き家の構造や劣化など総合的に判断できる能力が無ければ行うことはできません。一般的には建築士の資格を有する者が調査にあたることも多く、耐震診断を生業として請け負っているのも建築事務所や建築士を抱えている住宅メーカーが多くなっています。
また、耐震診断に対して費用の一部を補助する制度を有している自治体も多くなっていますが、その場合にはそれぞれの自治体が任命した「耐震調査員」が実際の調査を行うことになります。「耐震調査員」の名称は自治体ごとに異なる場合もあります。
耐震診断の費用は空き家の構造や床面積によって異なります。例えば3LDK程度の木造住宅に係る耐震診断費用はおおむね20万円~50万円の範囲に収まります。
また、建物の構造が鉄筋の場合や階数が多い場合は費用が多めにかかります。鉄筋造りの場合はおおむね平方メートルあたり1000円~3000円の費用が掛かります。
耐震診断に係る費用については以下のホームページも参考にしてください。
一般社団法人日本耐震診断協会
http://www.taishin-jsda.jp/price.html
南海トラフ地震等の発生で被害が多く見込まれる自治体を中心に、住居の耐震診断に対して費用の一部を補助する制度を設ける事例も増えてきました。
耐震診断補助金の対象となるのは一般的に「居住の用途で用いられる物件」とされていることが多く、誰も住んでいない空き家の場合は補助金の対象にならない場合もあります。
ですが、空き家であっても再度居住する予定があることや居住を前提に売却や賃貸を行う場合は(自治体の裁量次第にはなりますが)補助金の対象となる場合もあります。また自治体によっては住宅密集地であるなど倒壊後のリスクを考慮して空き家であっても補助金の対象とする自治体もあるようです。
これらの補助金はまずすべての費用を自身が立て替えておき、実際にかかった費用のうち定める金額が給付されることになっています。
補助金の請求には診断中の写真や診断結果を明示できる資料が求められるので、補助金を活用する場合には依頼する業者に前もって資料の作成を依頼しておきましょう。
また、自治体によって耐震診断やその後の耐震工事まで一貫して補助しているケースもあります。お住いの自治体に一度問い合わせることをお勧めします。
耐震診断を行ってから何をなすべきかは空き家を管理しているあなた自身が決めることになります。まず空き家をどう活用するのか、活用の方法を決めたら実際に何らかの対策を講じなくてはならないのかを考えていきましょう。
耐震診断を行うのは建築士など建物の構造等に精通している有資格者なのですから、診断と合わせてその後の対策方法も提案してもらうのもおすすめです。
具体的には以下の方法について検討されることをお勧めします。
耐震診断の結果判明した強度不足の部分を補うための改築やリフォームを行う方法です。空き家を将来的に居住できる環境にしておく必要がある場合や、不動産として第三者に売却あるいは賃貸する場合には必要となります。
一般的に行われる改築やリフォームでは、既存の柱に筋交いや合板を重ね貼りする補強、基礎のコンクリートに新しいコンクリートを入れて補強する増し打ち、屋根瓦を軽い金属鋼板等に変えて柱への負担を軽減する方法などが行われます。
住宅の主要な個所における耐震リフォームの相場は以下のとおりです。
仮に、一般的な3階建て3LDKの木造住宅で耐震リフォームをした場合、1件あたり最大で500万程度の費用が掛かると見込まれます。
耐震リフォームの方法や相場については以下のホームページもご参照ください。
耐震リフォームの費用について(エコリフォーム株式会社)
https://www.eco-inc.co.jp/special-plan/2006/12/post_44.php
空き家を住居あるいは不動産物件として使う予定がない場合は「解体」も選択肢の1つになります。
特に昭和56年以前に建築された空き家は現行耐震基準を満たしていない建造物も多いです。南海トラフ地震クラスの地震が来れば倒壊する危険性が高いことから、被害が想定される地域の場合は早く解体しておくほうが安心です。
なお、空き家の解体にかかる費用は「30坪、40坪、50坪以上の空き家を解体する時にかかる時間や費用は?」に詳しく書いているのでご覧ください。
また、解体費用の一部を自治体が補助してくれる場合もあるので、あわせて確認されることをお勧めします。
空き家の耐震診断は絶対に行わねばならないわけではありません。今後、空き家をどのように活用するのかによって耐震診断の有無が大きく変わってきますから、まずは親族でしっかり話し合っておくべきです。
「親族で」というのも、自分たちの家族やその子孫だけでなく、今後親族が空き家を使用することも十分考えられることと、親が所有していた空き家の場合は遺産分与の関係もあり親族間でその所有権を誰が持つかを話し合って決めておく必要もあるからです。
話し合っている間にも空き家は徐々に劣化しますし、大地震が起きる可能性も十分にありますから、空き家の管理で悩んでいる場合はスピーディに決断されることをお勧めします。
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