誰も住まなくなった空き家がそのまま放置されてしまった結果、伸びた樹木が隣家をさえぎったり小動物が住みつくなどして周辺の住環境に悪影響を与えるケースが年々増加しています。
国もこの状態は好ましくないと考え「空き家対策特別措置法」の施行など対策に乗り出しています。
対策の中でも特に注目を集めているのが空き家を譲渡した時の収入に対する特別控除です。空き家を第三者に譲りやすくするこの特別控除の仕組みや条件についてわかりやすく解説します。
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特別控除を受けるには、特定の条件を満たさなくてはなりません。
今回ご紹介する4つの条件は1つでも欠けていると適用されず、すべて満たさなくては特別控除の対象となりませんので注意してください。
この条件は空き家を所有していた両親等から直接相続した空き家でなければ特別控除の対象になりません。
さらに、この特別控除の条件として適用されるには「被相続人(両親等)が居住していた」事実がなければ対象空き家とはなりません。
両親等が住んでいなくてただ所有しているだけであったり、賃貸物件として所有していた借家などを譲渡した場合は特別控除の対象にはなりません。
現行の建築基準が施行されたのは昭和56年5月31日からです。
この改正は耐震基準の改正に伴って行われたのですが、昭和56年5月31日までに完成した家屋は現行の耐震基準を満たしていない状態になっているのです。
そのような空き家を譲渡されても強い地震が来れば倒壊する可能性もあるため、無理に居住するよりは解体して更地にしてもらう狙いがあります。
そのため、譲渡所得の対象空き家から現行の耐震基準を満たさない空き家を除く条件として具体的な期日が定められました。
ただしこの基準より前に建てられた空き家であってもその後のリフォームなどで現行の耐震基準を満たす空き家もありますが、それを確認するにはリフォーム時の建築確認証を確認して昭和56年6月1日以降の期日で建築確認証が発行され、かつ現行の耐震基準を満たしている証明書類を提出すれば特別控除の対象空き家とみなされます。
といっても、無理に対象空き家にするために古い空き家のリフォームをする必要はありません。耐震基準を満たさない空き家は解体して更地にしてから譲渡すれば特別控除は受けられるからです。
空き家の管理に困っている人の場合、一時的に事業のために第三者に貸し出したり自分で何らかの事業を行ったりする場合もあるかもしれません。
最近では「古民家カフェ」などのように雰囲気のある古い建物を使ってカフェやアトリエなどを開くことが流行っていますし、実際に事業を始めようと考えた人もいるかもしれません。
また他人に貸し出したり企業の事業用物件として貸し出すことを考える人もいますが、このような使用の事実があった場合は特別控除の対象空き家とはみなされません。
ですから特別控除を受けたいと思っている場合は賃貸や事業などを考慮せず売却を基本として検討することです。
高級住宅などには譲渡所得の特例を適応しないためにこの条文が設けられています。でもこの譲渡額を超えないように分割して売却する方法も理論上は可能です。
例えば建物と土地を分割して売却したり、土地の一部を分筆して建物+土地分の価格を1億円以下に抑える方法が考えられます。
今回の特例では最初に売却した時から3年を経過したのちに到来する12月31日までに売却した価格の合計が1億円を超えなければ譲渡所得の特例が受けられる仕組みになっています。
例えば総額1億5千万円の空き家を売却した場合、売却契約直後の平成28年4月1日に8千万円を受け取ります。
残りの7千万円を平成平成28年4月1日から3年後の後に到来する平成31年12月31日以降に受け取れば、条件の期間内に受け取る譲渡所得は8千万円となり譲渡所得の特例を受けられるわけです。
特別控除の対象空き家について条件をご紹介しましたが、この制度を利用する時に特に注意して欲しいことがあります。
特に重要なのは取り壊す前の空き家の写真を撮影しておくことや相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに譲渡することです。
他にも知っておきたい事項がありますので、ぜひ参考にしてください。
現行の耐震基準を満たしていない空き家でも、解体することで今回の特例を受けることが出来ます。ですから特別控除の対象の空き家は申請時に取り壊しておいても問題はありません。
このようなケースの場合、申請時に証拠写真を添付しなくてはなりません。
具体的には「取壊し・除却・滅失時から~敷地等の譲渡時までの当該敷地等の使用状況が分かる写真」を添付することが定められていますので、空き家が存在している時も含めて写真の撮影日時が分かるように撮影しましょう。
あなたが両親等から空き家を相続した日が「相続日」です。その日から起算して3年を経過する年の12月31日までに第三者に譲渡しなければ特別控除の適応が受けられません。
今回の特例は平成28年4月1日からの譲渡が対象になりますから「譲渡を受けてから3年を経過する年」と言う基準で言えば、平成25年4月1日以降に両親等の被相続人から譲渡を受けた場合初めて特例の対象になりえるわけです。
ですから平成25年3月31日以前に譲渡を受けた空き家の場合は今回の特例を受けることが出来ません。
今回の特例は平成28年4月1日からの譲渡が対象で、期間の定めとして譲渡日から3年を経過する年の12月31日までに譲渡することが要件ですので、平成31年12月31日までが特例の期限になります。
ここで言う譲渡とは登記上の権利も異動させており且つ譲渡の契約が期限内になされていることを言います。
ただし、別の項目では相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までに相続することとも規定されています。
優先されるのはこの「3年を経過する年の12月31日まで」の規定が優先です。そのため譲渡日によって特例が受けられる期間は以下のように異なります。
なお、どんな事情があっても上記の期間内に譲渡がされていなかった空き家は特例を受けることができません。
核家族化が進んだことで、親の世代と子どもの世代がそれぞれに家を構えるようになりました。その結果、親の世代が亡くなってしまうと住人のいなくなった空き家が増加することになりました。
さらに日本が少子化時代を迎えて今度は日本の人口そのものが減少し始めたことで、住宅そのものが余る状況になり使い道の無くなった空き家が放置されてしまうことになったのです。
空き家の管理については以前まで各自治体が条例を定めることでその管理を促すこととしてきましたが、それだけでは管理がスムーズに進まず問題になっていました。
そこで国も重い腰を上げて平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。
法律で空き家の管理を促すことにし、守られない場合は罰則を設けて強制的に自治体が空き家の解体を行うこともできるようにしたのです。
あわせて空き家の譲渡を促すために、空き家を売買した時に得られる譲渡所得について条件を満たす場合は、譲渡所得に3,000万円の特別控除を設けて実質的に空き家の売却収入に対する課税を免除する仕組みを設けました。
つまり管理が出来ないまま空き家を管理されるよりは売買して使ってくれる人に譲ってもらうことを国が積極的に促すことにしたのです。
ここで今回の特例を適用した場合の譲渡所得の計算式を紹介します。
そもそも譲渡所得は譲渡価額-(取得費+譲渡費用)と言う計算で決めるのですが、この計算式で出た答えから特別控除3000万円をマイナスすればいいだけです。
仮に今回の譲渡所得を長期譲渡所得(譲渡所得のうち所有期間が5年以上の資産を譲渡する時に得られる所得)と計算した場合、
税率は所得税15.315%+住民税5%となり、税率の合計は20.315%となります。
単純に考えれば3,000万円の特別控除の恩恵を受けると3,000万円×20.315%=6,094,500円となり、約600万円の節税が出来ると考えていいでしょう。
600万円の節税はあくまで空き家の譲渡所得に対してのみなされるもので、あなた自身が他の収入を得ている場合は、必ずしも思っている額の節税にならない場合もあります。
特別控除を受けたいと思っている人は、まずその仕組みを理解しつつ他の収入などとの兼ね合いも踏まえて検討されることをお勧めします。
今回の特別控除については、計算方法など以下のホームページに詳しく掲載されています。
https://www.mf-realty.jp/tebiki/mtebiki/11-8.html
空き家は維持管理の負担も大きいですから用途の無い空き家は売却してしまった方が持ち主としては負担が明らかに軽減されます。
両親等が亡くなって相続した空き家がある場合には、自分以外の兄弟などとも相談してその活用法や処分の方法を決めておくべきです。
特に今回の特例があれば税金が約600万円も軽減されることから、不要となった空き家の管理を誰がするかでもめることも無く兄弟間でスムーズに相続の手続きも進む可能性があります。
空き家の維持管理がなされない原因には用途が定まらないこともありますが相続がもめてその間に誰も空き家の管理をしなくなってしまうと言う場合も数多くあります。
今後も空き家は増加傾向にありますから、国としては管理が行き届いていて且つ耐震基準を満たす安全な空き家についてはどんどん再利用してもらうことを考えているわけです。
国の狙いと空き家にまつわる諸問題とをあわせて解決することを狙う今回の特例、今後も同様の措置が続くかどうかは分かりませんが空き家対策と関連して同種の施策が講じられる可能性はあるでしょう。
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