空き家の法律を解説|空き家対策特別措置法・固定資産税について

空き家対策特別措置法を守らなかったらどうなる?固定資産税が6倍?

管理が行き届かなくなって放置されている空き家が周辺の生活環境に悪影響を与えていることが、全国的に問題となっています。

 

国では問題となっている空き家の現状を踏まえて「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空き家対策特別措置法)を定め、平成27年5月26日から施行しました。

 

空き家を持っていない人には関係がない法律と思われがちですが、両親が亡くなってしまい実家が空き家になるなどの事態が起きれば、私たちの生活にある日突然「空き家の維持管理」が加わることは決して珍しい事ではありません。

 

今回はこの「空き家対策特別措置法」について知っておきたいことを4つご紹介します。なお、この法律の全文は以下のホームページに掲載されていますのでぜひご確認ください。

 

空き家等対策の推進に関する特別措置法(PDFファイル)

http://www.mlit.go.jp/common/001080536.pdf

 

空き家対策特別措置法を守らない場合

空き家対策特別措置法は国の法律です。

 

この法律ができた目的は、人口減少が進む中で空き家の数が増加していることを踏まえて管理の行き届かない空き家が増え、周辺の住民に危険をもたらさないように予防することを目的にしています。

 

また空き家そのものの再活用を促すために税金の優遇措置を見直すなど、空き家を手放して別の希望者に譲り渡しやすくする環境を整える意図も含まれています。

 

この法律を守らなかった場合、どのような事が課せられるのかを見ておきましょう。

 

税金の優遇措置が無くなる

 

空き家にかかる税金としては「固定資産税」があります。固定資産税は市区町村が定める「課税標準」によって算出されます。

 

持っている土地に空き家が存在する場合とそうでない場合の課税額の違いを見てみましょう。

 

1.更地の住宅用地の場合
(土地分)課税標準×1.4%

 

2.空き家のある住宅用地の場合
(土地分)課税標準×1.4%×1/6,(建物分)課税標準×1.4%

 

仮に、土地の価格を2,000万円、建物の価格を500万円として計算すると、税額は以下のとおりとなります。

 

1.更地の住宅用地の場合
(土地分)2,000万円×1.4%=28,000円

 

2.空き家のある住宅用地の場合
(土地分)2,000万円×1.4%×1/6=46,000円
(建物分)500万円×1.4%=70,000円
(合計)116,000円

ご覧のとおり、空き家があるだけで6分の1の減税がされて金額にして約10万円も税額が違う優遇措置が設けられているのです。

 

空き家対策特別措置法では管理が不十分で周辺に悪影響を及ぼす恐れのある「特定空き家」に指定された空き家について、この優遇措置を適用しないこととしています。

 

程度よく管理が行き届いている空き家でなければ税金の優遇を行わないことで適切な空き家の管理を促すことが狙いです。

 

持ち主とすれば約10万円の減税を失うことは避けたいですから、空き家の管理を行おうとするか売却や賃貸で空き家の管理そのものの負担を軽減しようとするでしょう。

 

時には持ち主として適切に管理をしているはずなのに特定空き家に指定されることもあり得ます。

 

特定空き家に指定されるか否かのポイントは「周辺の環境に悪影響を与えているかどうか」にかかってきます。管理上の参考にしてください。

 

空き家の管理をどこまですればいいかわからないなどの相談は、空き家のある自治体の担当課か民間の相談窓口に尋ねましょう。以下のホームページを参照してください。

 

空き家相談窓口(一般社団法人日本全国空き家相談士協会)

http://akiyasoudan.jp/

空き家管理システム(日本空き家サポート)

https://日本空き家サポート.jp/portal/

 

罰金が科せられる場合も

 

空き家対策特別措置法では、自治体が命令を行ったり改善を指導・命令する段階で条件を満たす空き家を「特定空き家」に指定することになります。

 

この特定空き家に指定されるプロセスとその後の流れは以下のとおりです。

 

  1. 通報や巡回によって危険な空き家が発見⇒自治体職員から持ち主に「告知」される
  2. 空き家の立ち入り調査を行う⇒特定空き家かどうかを判断する
  3. 「特定空き家」に指定して指導や助言を行う⇒持ち主はそれに従う
  4. 持ち主が指導に従わない⇒改善が見られないため「勧告」を行う
  5. 持ち主が勧告を守らない⇒期限付きの「命令」を行う
  6. 持ち主が滅入りに従わない⇒強制代執行を行う

 

これらのプロセスの中で自治体職員の検査や指導が入ることがありますが、それを拒んだり命令を期限内に実行しないと罰則により罰金を請求されることになります。

 

例えば立ち入り調査を拒否した場合は25万円以下の罰金が、改善を命令したのにそれに応じなかった場合には50万円以下の罰金が請求されることになります。

 

この罰金は刑事罰による罰金ではないので罰金を支払わないと何らかの刑事罰を受けることはありません。

 

ですが空き家を放置して崩壊した結果、倒壊した廃屋により何らかの被害を受けた人から訴えられたりすることはありえます。この場合は民事訴訟になるか刑事訴訟になるかは起きてしまった事故の内容によります。

 

特に、空き家の状態が他人や他人の財産が何らかの被害を受けることが分かっていたのにも関わらずそれを放置していた場合は刑事訴訟になる可能性もあり、さらなる罰金はもちろんのこと刑事罰を受ける可能性もあり得ます。

 

具体的には次のようなケースを想定しておくべきでしょう。

 

  1. 倒壊しそうなブロック塀を放置⇒倒壊して通行していた歩行者や車両が被害
  2. 倒木の危険がある庭木を放置⇒倒木して通行していた歩行者や車両が被害
  3. 側溝が土砂で埋まったまま放置⇒あふれた雨水と土砂が隣家に流れ込む
  4. 軒下のスズメバチの巣を放置⇒スズメバチに刺された隣家の住人が被害
  5. 部品が腐食した網戸を放置⇒強風で飛ばされて隣家のガラスを割る

 

なお、不動産に対して掛けられている損害保険では上記に該当する危険を放置している場合に保険金の支払いがなされない場合もあることを考慮しましょう。

空き家対策特別措置法で違法となる空き家

空き家対策特別措置法における「空き家」とは、長期にわたり人が住んでいない状態であるか恒常的に使用されている状態に無い建物のことを言います。

 

ですが周辺の住民や周辺の環境に悪影響を及ぼしている「特定空き家」になると、ただ人が住んでいないだけではなくもっと危険な状態となっている場合も多いです。

 

この章では実際に特定空き家に指定される空き家の事例を解説します。

 

倒壊する危険をはらんでいる空き家

 

空き家の劣化が進むと家を支える木材などの構造体まで劣化が進行し、その結果空き家そのものが倒壊する危険性が出てきます。

 

空き家が倒壊すると隣接する民家や道路に廃材やがれきが散乱して他人の財産を破損してしまう危険性も出てくるため、自治体が主導して空き家の強制解体を行うことになります。

 

持ち主としてはそこまで危険とは思っていないかもしれませんが、台風による大雨や強風は破損している空き家にとって重大なダメージを与えることもあります。

 

自治体は「万が一」まで判断して対応しようとします。つまり「倒壊する前に解体する」のです。

 

意外に空き家にダメージを与えているのはシロアリです。

 

シロアリは空き家の構造物を食べてしまうことで柱の耐久性が劣化させ、見かけでは何ともないように思える空き家でも劣化した構造体が外圧を支えきれず突風であっけなく倒れてしまうこともあり得るのです。

 

対策

定期的に空き家の状況を観察して、雨漏りやシロアリの発生を確認しましょう。

 

雨漏りは湿気の原因となり湿気は木材を劣化させる要因となります。もし雨漏りを見つけた場合には早急に対応が必要です。屋根の修繕や天井板の修繕などを行い劣化している構造体を安全な状態に保ちましょう。

 

シロアリも同様で、見つけた場合には専門業者に依頼してシロアリの駆除をすると同時に構造体の破損や劣化がないかを確認して必要な修繕を行いましょう。

 

シロアリ駆除については以下のホームページが参考になります。

 

空き家に住み着いたシロアリや羽アリを駆除する方法とかかる費用の相場とは?

 

不衛生な空き家

 

人の気配が無くなるとそれだけで害虫や小動物が空き家に住みつきやすくなります。

 

例えばゴキブリやネズミは人が住んでいれば掃除をするので住みつくことが少ないのですが、人がいなくなると空き家の中を縦横無尽に駆け巡ります。

 

窓を閉めていても床下や排水管などからこれらの害虫や小動物は家の中に侵入して住みかを作って繁殖することもあるのです。

 

これらの害虫などが空き家の中でおさまっていればいいものの、繁殖して周辺の民家に侵入するようなことになると衛生上有害な状態となってしまいます。

 

ここまでの状態になれば自治体も強制的に立ち入って害虫駆除などを行う場合も出てきます。害虫駆除に要した費用も後日持ち主に請求されます。

 

対策

ゴキブリホイホイなどを設置したりバルサンなどの害虫駆除剤を散布して空き家の中の害虫や小動物を駆除することに努めましょう。

 

また床下や排水管など害虫や小動物が侵入しそうな経路をシャットアウトすることも考えましょう。

 

特に床下の通気口の破損は意外と気づかないのでこの機に確認をしておくべきです。

 

排水管は月1回程度通水をして害虫などの遡上を防ぎましょう。通水は空き家の中のすべての水道を開栓して3分程度全開で水を流す程度行えば十分です。

 

それでも駆除できない害虫などがいる場合は専門業者に依頼して駆除してもらいましょう。害虫駆除の料金は以下のホームページが参考になります。

 

空き家にゴキブリが繁殖!駆除する方法とかかる費用とは?

 

景観を損なっている空き家

 

テレビで紹介される空き家を見ると、樹木が生い茂っていたりごみが庭に散乱していたりと見るからに汚い状態になっていることも多いです。

 

その他ガラスが割れていたり落書きが放置されているような状態も周囲の景観を損なっているとみなされます。

 

このように人が見て不快感を持つような状態の空き家も特定空き家に指定される要因となります。

 

特に樹木等は剪定すべきものを放置していると枝が伸びきって隣接する民家に支障をきたすこともありますし、道路に伸びきった場合は車両の通行時に車体と接触して破損を招く可能性も出てきます。

 

その他樹木によっては枯葉が落ちて周辺の環境を悪化させることもありますし、樹木の中にスズメバチなどの危険な昆虫が巣を作って危険な状態になることもあり得ます。

 

ここまでの状態になれば自治体がスズメバチの駆除や民家や道路の支障にならない程度の樹木伐採を行うことになります。

 

割れたガラスや落書きについては交換や除去の対応が必須です。ガラスが割れているということは室内に容易に侵入しやすいわけで防犯上好ましくありません。

 

また落書きをされていても放置していると「この家には誰もいない」とマーキングされているようなものですからこれも速やかに除去すべきです。

 

対策

樹木の選定を定期的に行う事です。それができない場合は庭木を伐採するなどの対策を講じることが望ましいでしょう。

 

落書きはケルヒャーなどの高圧洗浄機を使えば取り除けることもありますが、それでも取り除けない場合は専用の薬剤を使って塗料をはがすか落書きの上から塗料を塗って隠す以外に方法はありません。

 

これらの材料はホームセンターに売られているので容易に購入することができます。

 

あとスズメバチは見つけ次第すぐに駆除するしかありません。素人が駆除しようとしても逆に刺される危険性があるのでおすすめしません。専門業者に依頼して駆除してもらうのがベストです。

 

樹木の伐採やスズメバチの駆除については次のホームページが詳しいのでご参照ください。

 

空き家に蜂(ハチ)の巣ができてしまった時の対処方法とは?

 

周囲の住民に迷惑をかけている空き家

 

空き家対策特別措置法の基本は「周辺の住民に迷惑を掛けない」ことが第一です。

 

空き家を持つ身としては適切に管理をしているつもりでも、意外な事に気づかないこともあるのです。空き家の隣人とトラブルになる要素をいくつかピックアップしてみます。

 

  1. 不法侵入者による治安の悪化
  2. 雨水の流入による悪影響
  3. 野良犬が住みついたことによる糞害など

 

空き家にはホームレスが居すわったり不良が侵入してたまり場にしてしまう可能性もあります。いずれの場合も「空き家であることが分かった」時点で目を付けられてしまうことが一般的です。

 

雨水の流入は雨が降った時でないと分からないので持ち主もなかなかわかりません。

 

にわか雨では影響がないのに大雨が降ったら溝から雨水があふれて隣家に流れ込んでしまうこともありますから、大雨の降った後に一度空き家を訪れて確認しておくべきでしょう。

 

野良犬が住みついてしまうと糞をしますからその臭いの害が発生します。犬によっては凶暴な犬の場合もあって人に噛みつく場合もありますからますます周辺の生活環境に悪影響を与えてしまいます。

 

対策

これらの状態を招かないようにするためには「定期的な空き家の維持管理」を行うしかありません。

 

人の気配があれば不法侵入者も野良犬もやってきませんし、定期的に確認していれば雨水の流入もすぐに気づくでしょう。

 

あと、野良犬が侵入しやすくなっている状態の改善も欠かせません。塀や生垣の隙間や穴が開いている部分はふさぐべきですし軒先や物置など野良犬が住みつきやすい場所がある時は忌避剤をまくなどの予防も講じましょう。

 

定期的な空き家の維持管理を行うには、警備会社のホームセキュリティを活用するか、業者に依頼して空き家の維持管理をお願いするのが一番です。詳しくは以下のホームページに詳しく掲載していますのでご覧下さい。

 

空き家のホームセキュリティサービスは使うべき?おすすめの防犯対策

迷惑を掛けないように管理すること

空き家の管理には明確な方法や法律などはありません。

 

ですが、管理を行うにあたっては周辺の住民に迷惑を掛けないように管理することが前提です。持ち主として自分の負担にならないように空き家の掃除や庭木の剪定を行う程度の管理をするのが一般的でしょう。

 

時に空き家の管理が「それでは不十分だ」などと自治体から指導が入る場合もあります。

 

指導のきっかけとして多いのが近隣の住民からの通報です。こちらではきっちり管理をしているつもりでも納得がいかない場合は近隣の住民が持ち主ではなく自治体に苦情を申し出ることもあります。

 

近隣の住民が通報してくれば自治体はそれに対して現状の確認をせざるを得ませんから、結果的に自治体から持ち主に指導が入ります。

 

実際に通報される事例としては次のような5つのケースがほとんどです。

 

  1. 庭木が隣接地にはみ出して伸びきって困っている
  2. 庭木の枯葉が隣接地に飛散してしまう
  3. 空き家の一部分が壊れて風が吹く度に音が響く
  4. 野良犬や野良猫などが住みついて鳴き声がうるさい
  5. スズメバチが庭などに巣を作って周辺を飛び回る

 

いずれの事例も放置し続けた結果として、近隣の住民が実害を受けたことで通報に至るケースが多いです。

 

ごみが増えるなどの実害も嫌なものですが、野良犬に噛まれたりスズメバチに刺されるような被害をこうむると時には重篤な状態になりますから特に避けたい事態と言えます。

 

通報される前に管理をしておくことはもちろんですが、持ち主であるあなたが遠方にいるために空き家の状況が分かりにくい場合は近隣の住民に連絡をしてもらうことも考えてみましょう。

 

連絡をもらえたら持ち主としてすぐに対処しますというアピールも大事です。

 

具体的には隣接の民家には自分の連絡先を伝えておくことやこちらから問い合わせて空き家の状況を確認することが望ましいです。
自分だけでは空き家の細かい管理が難しいようであれば民間企業の空き家巡回サービスなどを利用するのも良いでしょう。

 

空き家の巡回を行ってくれるサービスについては以下のホームページに詳しく紹介していますのでご覧ください。

 

空き家管理サービス(大東建託パートナーズ株式会社)

http://www.kentaku.co.jp/etc/ak/

自治体が強制的に解体する場合がある

危険な空き家を放置していた場合、どうなるのでしょうか。

 

法律では「自治体から指導や命令がなされる」ことや「自治体が持ち主に替わって空き家を解体する」ことが可能となっています。

 

特に、明らかに危険な空き家は自治体が強制的に解体する事がありますが、これを「行政代執行」といいます。行政代執行は本来の持ち主に替わって自治体が費用を立て替えて代わりに措置を講じることになります。

 

この場合、持ち主が自ら解体を発注した場合の費用と行政代執行で自治体が立て替えた費用とどちらが高いかと言えば自治体の立て替えた費用の方が高くなります。

 

と言うのも自治体は入札で業者を決定するので値引き交渉を行いません。業者もそのことはわかっていますから一般市民から受注した場合よりも高い価格で仕事を請け負おうとするのです。

 

つまり、どうせ空き家を解体するなら自分で一から解体を段取りした方が解体費用は安価になるのです。自治体に高い価格で解体されてしまう前にぜひ空き家の解体を検討しましょう。

 

最近は特定空き家の解体費用の一部を助成する制度を設けている自治体も増えてきました。自治体の助成や補助金を活用すれば解体費用の負担も軽減できます。

 

空き家の解体に関する情報は以下のホームページに詳しく掲載されています。

 

全国の解体費用相場(解体サポート全国版)

https://www.kaitai-support.com/akiya02.html

まとめ

空き家対策特別措置法は管理の行き届かない空き家が増えないように国が定めた法律です。

 

この法律は空き家の管理をする人が負担に耐えかねて適切な管理ができないことを前提に、空き家を譲りやすくするための方策や空き家の管理について具体的な基準を設けたことが特徴です。

 

最近は管理の行き届いていない空き家が倒壊して隣接する民家や道路にはみ出したりする場合や、空き家を根城にして害虫や害獣が繁殖して周辺の衛生状態を悪化させる事例も多くなっています。

 

空き家の持ち主としては周辺の住民に迷惑を掛けないように適切な空き家の管理を行うべきです。それができない場合は民間企業の空き家管理サービスを利用したり空き家そのものの解体や売却を検討することも必要です。

 

特に危険が生じているとみなされる「特定空き家」に指定されると、固定資産税の減免が受けられなくなるなど持ち主の負担も増えてきます。

 

目先の負担を惜しむのではなく将来的に生じる負担も考慮して空き家の管理を検討してください。

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